韓国版の計算式からして謎の多いスライドスキルのダメージ計算式を検証する。韓国版でスライドスキルダメージ計算式とされているものは以下の通りだ。
(((スキル表記ダメージ×400+装備攻撃力×120+(-装備なし機敏性~+装備機敏性)×40)×(属性補正+クリティカル補正))/(敵防御力×0.2+400))×(1-敵防御力×0.005/100)
※Nymphet氏のinven投稿記事を参照
上記の計算式をもとに、日本版でスライドスキルのダメージ計算はいかにして行われているのか、また、スライドスキルの威力に対し攻撃力・機敏性はどのように影響を与えているのかを検証する。
前提
- スライドスキルは攻撃力・機敏性ステータスの影響を受ける
- スライドスキルのダメージにはバラつきがある
検証方法
- 使用するチャイルドは以下の2体
★6ヘスティア
★4フェンリルHP 攻撃力 防御力 機敏性 クリティカル 7372 5524 2763 3021 3265 HP 攻撃力 防御力 機敏性 クリティカル 1818 1356 657 718 785 - 同一ステージ、同一対象にスライドスキルを50回使用しダメージを計測
- 攻撃力上昇補正のついた武器を装備した状態で同様の計測を実施
- 機敏性上昇補正のついたアクセサリを装備した状態で同様の計測を実施
スライドスキルダメージ計算式検証
そのまま検証するにはやや煩雑な計算式のため、いくつか整理を行う。
まず攻撃力の上昇する装備は使用しないので、攻撃力に関する部分はとりあえず無視する。機敏性についても同様に無視するつもりだが、ここに関してはそもそも式の意味がわからない。
(-装備なし機敏性~+装備機敏性)×40
装備なし状態での機敏性が負の値になっているのも不思議だが、その後のチルダ記号(~)はなんだ。調べたが数式的に意味を持つとは思えなかった。あれか。呼びかけるときのやつか。「一休どの~!」のときの”~”か。バカな。途中で新右衛門さんが出てくる数式など聞いたことがないので、とりあえず見なかったことにする。
そしてもう一つ、検証の前にある仮説を立てる。
仮説① 二度目の防御減衰について
スライドスキルとノーマルスキルの算出式は途中までよく似ている。なので、ノーマルスキルのダメージ計算検証で判明した防御減衰に対する変更がスライドスキルにも同様に適用されていると仮定し、式を以下のように仮定する。
(((スキル表記ダメージ×400+装備攻撃力×120+(-装備なし機敏性~+装備機敏性)×40)×(属性補正+クリティカル補正))/(敵防御力×0.2+400))
二度目の防御減衰式【(1-敵防御力×0.005/100)】を削除されたものとし、なおかつ装備関連の補正(赤字部分)がゼロであるとして進める。
スライドスキルダメージ検証:装備なし
使用するステージはゴールドダンジョン上級。対象はLv32ボクサー(防御力3095)
フェンリルを使用してボクサーにスライドスキルを放った場合、計算上発生するダメージは358。
実際の結果は以下の通り。
敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|
3095 | 338 | 358 |
ダメージにかなりのバラつきが生じたが最大ダメージは358まで上昇したため、やはりスライドスキルにも二度目の防御減衰はかかっていないとみるが妥当だろう。続いて攻撃力上昇補正のある武器を装備した場合のダメージ。
スライドスキルダメージ検証:攻撃力の影響調査
+14強化の道路標識(攻撃力+654)を装備させ同様の検証を行う。ステージや攻撃対象に変更はなし。算出ダメージは436。
敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|
3095 | 414 | 435 |
露骨にダメージが上昇した。最大ダメージのみならず最小ダメージにも変化がある。仮説①の式は最大ダメージの算出式としてはそこそこ信ぴょう性のあるものだということがわかったが、しかしダメージのバラつきが気になる。invenやcafe naverなどで先人の知恵を漁ってみたが、それらしいものは見つけられなかった。ここではいったん、スライドスキルのダメージは算出後に95%~100%の範囲でバラつきが生ずる、と仮定した。
スライドスキルダメージ検証:機敏性の影響調査①
続いて機敏性ステータスの影響調査だが、フェンリルでは機敏性を上昇させる武具を装備できないことに気づき、検証キャラをヘスティアへと変更した。
また、算出式検証の確度を高めるためステージも変更している。機敏性調査で使用したステージは2-2-1。対象はLv12,19のバックバニー。防御力はそれぞれ1149,1318となる。
まずは未装備状態でのダメージ検証。
算出ダメージは1436(対象防御1318)と1513(対象防御1149)だ。
※バニーがスキル防御アップスキルを使用した際に出たダメージは無効なものとして除外している。
キャラ | 敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|---|
ヘスティア | 1318 | 1308 | 1429 |
1149 | 1369 | 1504 | |
フェンリル | 3095 | 338 | 358 |
最大ダメージは概ね算出式の通りだが、ダメージのバラつきがおかしい。先ほど仮定した最終ダメージの95%~100%という範囲を大きく超えている。なんてことだ。立てた仮説が2分で瓦解した。早すぎる。賽の河原の鬼だってもう少し待ってくれるぞ。
ランダムな固定割合によって変動幅が決められていないことはわかった。では、このバラつきは何によって決定されているのか。なぜフェンリルよりヘスティアの方がバラつきが大きくなったのか。
そんなことを考えつつしばらく数式を眺めていると、ふと、あることに思い当たった。
チルダ(~)だ。
仮説② 機敏性が決定しているもの
一旦は無視したあのチルダの存在が急に頭をもたげてきた。あれがもし、新右衛門さんの語尾などではなく、本当に記号そのままの意味だとしたら。つまり、”最小ダメージ~最大ダメージ”の真ん中に位置する”~”を意味しているのだとしたら、正しい算出式は以下のようになるのではないか。
- スライドスキル最小ダメージ算出式
(((スキル表記ダメージ×400+装備攻撃力×120+(-装備なし機敏性)×40)×(属性補正+クリティカル補正))/(敵防御力×0.2+400)) - スライドスキル最大ダメージ算出式
(((スキル表記ダメージ×400+装備攻撃力×120+(+装備機敏性)×40)×(属性補正+クリティカル補正))/(敵防御力×0.2+400))
このように仮定すれば、素の機敏性がより高いヘスティアの方がバラつきが大きくなることの説明がつく。また、機敏性がスライドスキルダメージに与える影響も、ダメージ全体の底上げではなく”最大ダメージの上昇”であることになる。
この仮説に基づいて最小ダメージを再計算した場合、ダメージ変動幅は以下の通りになる。
キャラ | 敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|---|
ヘスティア | 1318 | 1300 | 1436 |
1149 | 1369 | 1514 | |
フェンリル | 3095 | 337 | 358 |
実際の変動幅は以下の通りだ。
キャラ | 敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|---|
ヘスティア | 1318 | 1308 | 1429 |
1149 | 1369 | 1504 | |
フェンリル | 3095 | 338 | 358 |
計算上の変動範囲内におさまっている。
光明が見えてきた。
この新たな仮説をもとに改めて機敏性影響調査を実施した。
スライドスキルダメージ検証:機敏性の影響調査②
使用する装備は+11強化のベネチアンマスク(機敏性+300)
もう少し露骨に機敏性の上がるものを使いたかったが、これしかなかったのでやむを得ない。
使用ステージ、対象などに変更なし。
また、機敏性上昇による計算上のダメージ変動幅は以下の通り。
敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|
1318 | 1300 | 1449 |
1149 | 1369 | 1527 |
そして実際のダメージ変動幅。
敵防御力 | 最小ダメージ | 最大ダメージ |
---|---|---|
1318 | 1318 | 1445 |
1149 | 1373 | 1518 |
未装備と比較して、機敏性上昇装備時の方が最大ダメージおよびダメージ平均が明らかに上昇した。
最小ダメージについても上昇しているように見えるが、最大ダメージ上昇に伴う抽選機会の減少によるものと思われる。未装備とほぼ変わらない値のものも出ているため、おそらく機敏性は最大ダメージにのみ影響するのだろう。もうそういうことにする。
結論
- 日本版スライドスキルダメージ算出式では、二度目の防御減衰式が削除されている
- 攻撃力はスライドスキルの最小ダメージおよび最大ダメージに影響を及ぼす
- スライドスキルの最小ダメージは未装備時の機敏性によって決定される
- 装備による機敏性上昇値はスライドスキルの最大ダメージに影響を及ぼす
- スライドスキルのダメージ算出式は以下の通り
最小ダメージ
(((スキル表記ダメージ×400+装備攻撃力×120+(-装備なし機敏性)×40)×(属性補正+クリティカル補正))/(敵防御力×0.2+400))
最大ダメージ
(((スキル表記ダメージ×400+装備攻撃力×120+(+装備機敏性)×40)×(属性補正+クリティカル補正))/(敵防御力×0.2+400))
あとがき
調査の性質上それなりの試行回数が必要なものだったが、時間的制約により回数を重ねることができず、結論がだいぶ恣意的になってしまった。また、属性やクリティカルの補正まで手が回らなかったが、これはまた別の機会に検証する。
機敏性がスライドスキルに影響を及ぼすことは確かではあるが、攻撃力に比較するとおまけ程度のものだろう。防御面の恩恵もあるため一概に攻撃力>機敏性とも言えないが、少なくともスライドスキルのダメージを追求する上では攻撃力に軍配があがる。
次は追加ダメージ、防御無視ダメージについて検証したい。