デビルランブル、デスティニーチャイルドの疑似PvPコンテンツである。
ランキング上位まで勝ち進めば少なからぬ報酬を得られることもあり、ゲームにおけるエンドコンテンツの一つとなっている。本稿では韓国版一年のメタ変遷を追いながら、日本版デビルランブルを勝ち抜くデッキを吟味していく。メタ変遷についてはInvenに投稿されたこちらの記事を参考にした。
サービス開始~2016年12月:デビルランブル黎明期
最速・最大。”竹槍メタ”の誕生
リリース後の混沌の中、はじめに主導権を握ったのは「防御無視ダメージディーラー(イナンナ、アルテミス)+クリティカルバッファー(パンテオン、メルポメネー)+加速バッファー(マヤウェル、キリヌス)」を組み合わせた”竹槍メタ”だ。
加速とクリティカルバフを受けたダメージディーラーが敵を一体ずつ確殺していき、ドライブゲージが溜まればマヤウェルのドライブスキルで混乱を付与し反撃の芽を摘む、まさに必勝の公式だ。単純かつ強力だったため瞬く間にデビルランブルを席巻した。
出血メタの隆盛
11/18に実施されたキャラバランス調整により、出血ダメージの大幅な上方修正が行われた。これにより、防御無視という利点を持ちながらダメージ効率が悪く、いまいち日の目を見なかった出血ダメージディーラーが一気にスターダムへと躍り出た。
ジュピター、ヘスティア、フェンリルなどの出血を主なダメージソースとするキャラクターがじわじわと勢力を伸ばし始めるとともに、出血ディーラーのサポートとして石化デバフを持つチャイルド“モア”が注目を集めた。
タンクがいようがお構いなしに相手をなぶり殺しにする出血メタ今でこそ被ダメージ回数によって解除されるようになった石化デバフだが、当時にはそういった制限がなく、無限に相手を石化状態にしておくことが可能だった。出血状態の相手を石化させ、なすすべなく死に至らしめる出血メタが誕生したのだ。
挑発タンカー、ハデスの逆襲
デビルランブル黎明期の混沌の中、ただ一人トップタンカーの座に君臨し続けたのが最強バリアタンカー”ダナ”である。味方全体へのバリア付与と防御力上昇バフによって、あらゆる環境の変化に適応してきた。
そんな中、11/18のバランス調整により、ダナの座を脅かす最強タンカーが誕生した。挑発タンカー”ハデス”である。
調整以前から挑発タンカーとしての役割を持ってはいたものの、防御面が充分とはいえず、さんざん相手を挑発しておきながら集中攻撃に耐えられないという、ムカつく女子中学生みたいな欠点を持っていた。しかし彼の持つカウンター効果が“受けたダメージの一部をカットし、その分を相手に返す”という効果に変更されてから一転、鉄壁の要塞へと生まれ変わった。
渾身の一撃を放っても強制的にハデスへと吸い込まれさらに手痛いしっぺ返しを食らう、まさに先述の”竹槍メタ”のカウンターとしての地位を確立したのだ。
2017年1~3月:侵略者ブラウニーの登場
ヒーラー再評価期
防御無視かつ累積可能な出血ダメージをばら撒く出血メタによってタンカーの地位が脅かされる一方、出血ダメージを相殺する役割としてヒーラーの価値を再評価する流れが生まれた。メティス、ルサルカ、レダなどの回復型キャラクターが出血メタの対抗馬として起用されることとなった。
とはいえこれはあくまで対症療法に過ぎず、出血メタをトップから引きずり下ろすまでには至らなかった。
“ブラウニー”の登場
新たな加速バッファー“ブラウニー”。
登場当初はそのキュートなルックスによって注目されたこの愛らしいげっ歯類は、すぐさまその獰猛な本性と前歯を露わにした。
ブラウニーの性能は先述したマヤウェルのほぼ完全上位互換であった。高い加速効率、出血含むデバフ持続時間の減少、最大3人の敵を20秒気絶させるドライブスキル、さらに回復まで請け負うという始末。デビルランブルでの重要なキーワードを全て詰め込んだような厨性能に「ブラウニーのカウンターはブラウニーだけ」と評されるほどだった。
当時のデビルランブル上位100ユーザーのうち実に98%がブラウニーを使用するという事態にまで発展し、そのひっさつまえばでデビルランブルを大いに食い散らかした。
2017年4~6月:出血メタの黄昏
狙撃手”ヤン・ジシュカ”
ブラウニー登場以後も出血メタの勢いは衰えず勢力は拡大し続けたが、2017年3月末、その栄光に一筋の影を落とした者がいた。コラボイベントで追加された新キャラクター“ヤン・ジシュカ”である。
ヤン・ジシュカの性能は防御無視の連打ディーラーだが、従来のそれとは一線を画す特徴があった。彼女は挑発タンカーを無視して妨害型キャラを優先攻撃することができたのだ。
出血メタの立役者であるジュピターとモアはいずれも妨害型である、出血が強烈とはいえタンカーに守られていなければその防御力は高が知れている。ヤン・ジシュカは彼らをピンポイントで狙撃することができた。これまでハデスの影に隠れて安全に出血をばら撒いていた妨害型キャラが、妨害型絶対殺すエロ全身タイツウーマンによって一気に矢面に立たされることとなった。
思わぬ刺客の登場に慄く出血メタだったが、しかし王の座を追われるほどではなかった。ヘスティアやフェンリルなど”攻撃型”の出血ディーラーを起用することで彼らは難を逃れたのだ。狙撃手の刃も王の首までは届かなかった。
このときは、まだ。
無敵の怪物”メデューサ”の登場
狙撃者ヤン・ジシュカの追撃を免れた出血メタだが、その後もマアト(石化解除、味方蘇生)やアウロラ(一部の味方のデバフを確率解除)の登場により徐々に追い詰められていく。それでもなおしぶとく玉座にしがみつく出血メタにトドメを刺したのは、タンカー“メデューサ”だった。
もとは一介の挑発タンカーに過ぎなかったメデューサだが、上方修正により挑発効果は削除され、かわりに味方4体に防御バフと“無敵”を付与する効果を得た。無敵は一度だけ相手の攻撃を無効にする効果を持つ――これだけだとダナの下位互換のように見えるが、”無敵”の本領は“無敵付与時、すべてのデバフを解除する”という効果にあった。
これが出血ディーラーにとって致命傷となる。
出血ディーラーがいくら出血ダメージをばら撒こうと、メデューサのスライドスキル一発で解除されてしまうのだ。さらにメデューサはドライブスキルで味方全体に”デバフ免疫(一切のデバフが一定時間通らなくなる状態)”も付与した。皮肉にも、メデューサ自身が石化から仲間を守る盾となったのだ。
完全なるアンチ・デバッファーのメデューサと、石化による足止めを恐れる必要のなくなったヤン・ジシュカのシナジーは、半年続いた出血の王国を完膚なきまでに破壊しつくした。
速さが足りている!
メデューサの登場により廃墟と化した王国の玉座に、凄まじいスピードで滑り込むキャラがあった。上方修正された加速バッファー“コウガ”である。
修正前は★4チャイルドのマヤウェル・キリヌスよりも低い加速効率によって、ハズレキャラ扱いされていた彼女。上方修正によりブラウニーに並ぶ加速効率を手に入れ、なおかつ自分含む味方のスキルゲージを一定確率でフル充電するという壊れスキルまで手に入れた。さらに、ブラウニーのノーマル加速スキルとコウガのスライド加速スキルが互いに重複するという仕様がブラウニーとコウガを同時起用する“超加速メタ”を作り出した。
矢継ぎ早に繰り出されるスライドスキルとそれによって溜まったドライブゲージで気絶付きのドライブスキルをお見舞いする、この強烈なコンボで超加速メタはあっという間に出血メタにとってかわった。
超加速デッキ当時の様子。凄まじい勢いでゲージが溜まっていくのがわかる。しかし超加速メタはそう長くは続かなかった。6/7に行われたアップデートにより、コウガのスキルゲージフル充電スキルの対象からコウガ自身が除外されるよう修正が入ったのだ。ブラウニーとコウガのシナジーは目に見えて低下し、超加速メタの時代はあっけなく幕を閉じた。
2017年7月~現在:妨害型の時代ふたたび
妨害型復活の狼煙
メデューサの台頭によって出血メタが駆逐されて以降、再び妨害型がデビルランブルの覇権を握るのは難しいと思われていた。そんな中、妨害型に一筋の光が差した。新デバフ”分解”持ちチャイルド、リタの登場である。
ラグナブレイクシーズン3で登場したリタは、敵に付与された”無敵”を削除しなおかつデバフ時間短縮無効効果を持つ新DoTの”分解”を相手に付与するという、能力だけ見れば完全にメデューサのカウンターだった。そんな後出しじゃんけん感のある彼女だが、ともかく妨害型復活のかすかな兆しとなった。
リタが頭角を現したものの依然として厳しい戦いを強いられていた妨害型だが、“イゾルデ”と“キャミィ”の参戦により状況が一変する。
イゾルデはラグナブレイクシーズン4での追加キャラ、キャミィはストリートファイターコラボで追加されたキャラだ。イゾルデは防御力の高いキャラに優先して”沈黙”デバフを付与する特性によりメデューサへの牽制として役割を持ち、キャミィは攻撃力の高いキャラに優先して”気絶”を付与する特性によりダメージディーラーを封殺する役割を担った。
相手の手を遅らせるスキルを持つイゾルデ・キャミィとリタとの組み合わせは強力なシナジーを産み、出血メタに次ぐ妨害型第二の全盛期が到来した。この組み合わせは現在においてもデビルランブルで猛威を奮っている。
メイドカフェの爪痕
妨害型使用率が急上昇するデビルランブルで、さらに覇を唱える者が現れた。ラグナブレイクシーズン5で追加された連打ダメージディーラー“モーガン”と、アンチ・デバッファー“ヴェルデレト”だ。
モーガンは、防御無視、追加ダメージ、2体2連打(敵1体のときは4連打)という連打ダメージディーラーのミニマムスキルを当然おさえた上でさらに重複する自己バフ、カウンター効果無視、殴った相手のバフ削除と、ヤケクソ感すら漂うスキルで天敵である挑発タンカーを怖れず殴れる唯一の連打ディーラーだ。彼女の登場は長らく息をひそめていた”竹槍メタ”の反撃の狼煙となった。
一方のベルドゥルレはスライドスキルで味方にデバフ免疫を付与することができるバッファーだ。メデューサより高回転の免疫付与と、さらに高倍率の攻撃バフ付与によってモーガンはじめ攻撃型の最良のパートナーとなった。
いずれも登場して間もなくその有用性が認められ、現在のところもデビルランブルの使用率上位を占めている。
しかし今だブラウニーやコウガの使用率も高く、さらにモーガンへのカウンターとして反属性挑発タンカーの”エア”にも光が当たるなど新たな変化も生まれている。デビルランブルにおいて必勝のデッキは存在しないし、必ず勝てる戦法というものもない。新たなキャラクターの追加やキャラバランスの調整によって、これからもメタは変遷していくだろう。
日本版のデビルランブルはどうなる
韓国版よりキャラが少なく、さらにスキルにも調整の施された日本版のデビルランブル。初めに覇権を握るのはどのデッキだろうか。
結論から言うと“竹槍メタ”だと私は思う。
デビルランブルで使用されるデッキは大きく分けて、”妨害型主体”か”攻撃型主体”の二つだ。出血メタは妨害型主体デッキになるが、日本版でこれが流行ることは考えにくい。そもそも出血デッキが台頭したのはモアによる石化デバフとのシナジーのおかげだ。そのモアも下方修正を受け、しかも日本版ではリリース時にモアが実装されておらず、代替え可能なデバッファーもリリース時にはいない。極めつけは日本版での出血ダメージの大幅な下方修正だ。まともに機能する出血デッキを組むことすら難しいだろう。
一方、竹槍メタは前提条件が非常に軽い。殴りが痛いやつをバフでさらに痛くして殴ればいいのだ。最も原始的だがそれゆえ最も作りやすい。加速要員のキリヌス・マヤウェルはもちろん、コウガもスキル修正後の状態で実装されている。さらにクリティカルバッファーも★5パンテオン、★4メルポメネ、★3キンティアと事欠かない。機能させることはさほど難しくないだろう。
竹槍メタへの追い風の一つとしてハデスの弱体化も上げられる。カウンターのダメージカット率が半減以下にされているため、竹槍に耐え切れず沈む可能性が高い。ある程度凸を重ねたハデス相手にはやはり分が悪いだろうが、逆に言えばそのぐらいしか天敵がいない。韓国版リリース時と同様、竹槍メタによる原始的な殴り合いが主流になるだろうと思われる。
もう一つ、環境メタに食い込む可能性のあるものとして個人的に考えているものがある。“フィーバーデッキ”だ。
コウガとアリアでドライブゲージの回転率を上げ、相手よりも先にフィーバータイムに入り一気に殲滅を図るデッキである。
やられる前にやる、がメインテーマの韓国版デビルランブルと違い、日本版はダメージスキルが軒並み下方修正を食らっている。竹槍メタでも確殺することが難しいバランスになっているとしたら、韓国版では成立しづらかった耐久デッキが日の目を見るのではないだろうか。であれば、フィーバーゲージが溜まるまで耐え、溜まった瞬間にノーマルスキルの強烈なディーラーによる攻勢を図るというデッキがありえても不思議ではない。
構成はいたってシンプルだ。加速バッファ+アリア+ダメージディーラー+タンカー+ヒーラーだ。幸いにもアリアは事前ガチャで大体の人が持っている。あとはとにかくドライブスキルを3回撃つまでダメージディーラーが死ななければいい。
とはいえフィーバーデッキは韓国版では環境にカスリもしないマイナーデッキだ。日本版でもいざフタを開けてみたら全然じゃん、という可能性は非常に高い。しかし試す価値はあるように思う。